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丑読【うしどく】

インプットやアウトプットより読書プロセスを重視する読み方。思考の量と質、読書の経験値、本と自分との関係やその変化。牛が草を反芻するように、短い文を何度も玩味し、自分の新たな血肉に変えていくこと。読書を愛する姿勢のひとつ。

Webデザイン 良質見本帳
Webデザイン良質見本帳

表現の対義語は、印象。表現がデザインできるので、印象も然り。このことをこの本はよく分かっている。というより、もう印象も、組み合わせて作ることが当たり前な時代だ。印象は偶然の産物ではなく、試行錯誤の結果でもなく、スマートに組み合わせて作るものになっている。印象にもベストプラクティスがあるのだ。

表現を生む人が本を読むのは、表現を知るためである。というのは、表現を組み合わせて自分の表現を作るのであり、表現をまったく新たに作ることはしない。新しい文も、既存の文字を結合させる。新しい文字も、既存の文字部品を組み合わせて作る。まったく新たな要素を持ち合わせなくても、表現は作れる。まったく新たな印象とは、既存の表現の組み合わせだ。

配色も部品もフォントや背景も、どのような表現ならどのような印象が作れるか、という知識が豊富にあると組み合わせが多く、また、早くなる。結局、ファッションや料理と同様、レシピの世界だ。作り方があまた存在する時代に生まれたからだろう、試行錯誤の機会が逆に貴重だ。

退屈をぶっとばせ!
退屈をぶっとばせ!
アイドラーな家族
何もしないリラックスした時間を増やしたら、子どもも大人もみんな幸せになるはずだ

好きなことがたくさんある子どもだった。将来を考えるときはいつも「趣味にして楽しみなさい」と、教師である父から諭されて育った。今は結局好きなことしかしていない。ウェブデザイン、システム開発、文字を使う専門的な仕事だ。好きなことのひとつでプロになれたのだ。

最近またひとつふたつ趣味が増えてしまった。論文誌のスキャンや、讃美歌の作曲、鉛筆画、洋裁。始めたはいいが、三日坊主で終わってしまうかもしれず、時間が必要だ。でも自由に使える時間は限られている。玄人はだしの多趣味な人物を、どこか目指している節がある。昔からほしいものは身を助ける技術である。

「幸せな老後」を自分でデザインするためのデータブック
「幸せな老後」を自分でデザインするためのデータブック
CHAPTER01 超高齢化社会を迎えた日本で起こること
Active(活動的)
Academic(知的)
Affluent(収入のある)

資産形成は老後のためというが、ほんとうに老後の暮らしを想定したうえで考えているか、と反省したため本著を読んでいる。入院すると寿命が縮まるので、在宅医療を希望したいが、働き手が不足している現状。数十年後の予測値も載っているので、自分の老後の参考になる。

定年退職後の暮らしはTVが中心というデータ。認知症は入院期間が1年以上の場合が多い。孤立、フレイル、再雇用。今のうちに準備し、注意しておけば、信じられないほど余裕のある老後につながるかもしれない。

スリープ・レボリューション
スリープ・レボリューション
第1章 睡眠危機の時代

この本は、読んでいるうちに眠くなるので、夜に寝床で読んでいる。学術成果やウェブにある情報をたくさん引用し、一冊で最新事情をほとんど知れる。睡眠にあらゆる面からアプローチしているので、睡眠を柔軟に捉えられる。ありがたい本だ。

睡眠に関する類書2冊と併せて買った。著者自身の経験も含めて書いている。説得力がある。この点で本著のみを手元に残し、今でも読み続けている。

退屈をぶっとばせ!
退屈をぶっとばせ!
「許可を待つな!」
必要な物は存在しないこともある。だからきみはそれを自分で作らなければならない!

作ったものを使うために、お金を払ってきた20世紀。ひとりで身に付けられる技術は限界があり、専門性を仕事にして給料を貰いつつ、商品を消費する。この生活が資本主義の実態だ。そして、自分で作ったものを売る活動が、ウェブでできるようになった。

作って売る。使うために買う。この基本に基づけば、いかに現代の社会が難しくても、見通しが立つ。自分で作るという動きをティーンズに知らしめるこの本を歓迎したい。

Cooking for Geeks
Cooking for Geeks
ハロー、キッチン!
われわれギークは物事の仕組みを解き明かすことに熱中しているが、それでも食事はしなくてはならない。

読んでいて楽しい本だ。ずっと机の端に置き、読み始めることを我慢していたが、きょうようやくページを繰った。カバーだけでなく本文の装丁が美しく、魅力的だ。(私は装丁者に会ったことがある!)

類書で厚さが5cmもある「マギーキッチンサイエンス」を持っている。詳しく調べて事典にした本だ。調理法や食材の蘊蓄が充実していて、随分とお世話になったが、とても読み切れない。一方、この「Cooking for Geeks」は2cmあり厚いが、読み切れる本だ。好奇心と創造性に富んだギークは、料理にも向いている。例題としてドゥンカーのろうそく問題が載っている。(個人的には、画鋲の箱ではなくマッチの厚紙に切り込みを入れ、直角にして使えば充分だと思った。)

引用は本項の冒頭の文だ。このユーモア、好きだ。そして全体にわたり読みやすい翻訳。楽しい読書経験になりそうだ。

アイデアの99%
アイデアの99%
第1章 整理力
アイデアを形にすることは、私たちの本質への闘いとも言えるでしょう。

べハンスの創業者によるビジネス本。この本は、アイデアを思いつくことは簡単だ、と述べるところから始まる。エジソンの言う「1%の閃き」の殆どは、各人の生活の中で消えていく。本書で紹介される「実現=発想+整理+仲間+統率」のうち、整理、仲間、統率の3要素を解説したのが本書だ。

第1章の終わりに載っている、べハンスのチームが使う管理表を、私はPowerPointで再現し、職場で使ってみた。やや慣れにくいのでもう少し改善の余地がありそうだが、どのように使いにくいのかまではよくわからない。私の自己流のメモ取り法よりは整理しやすく、これからもA4に印刷して使いたい。

意味がない無意味
意味がない無意味
アンチ・エビデンス
あらゆることがあらゆるところに確実に届きかねない過剰な共有性の、接続過剰のただなかで、エビデンスと秘密のあいだを揺らぐ身体=資料体を、その無数の揺らぎの可能性を、ひとつひとつ別々の閉域としてすばやく噴射する。柑橘系の匂いで。

この引用文を先日Twitterに投稿した。私はこの文を名文だと思う、と書き添えて。すると、ほどなく著者自身からリツイートを頂き、一晩で2万近いインプレッションを頂いてしまった。さらに、本人から、この部分の文意を理解してくれていることを嬉しく思う、という内容のコメントを頂いた。心から嬉しい出来事だった。

というのも、この文はネットで評判が散々なのだ。私が読む限り、彼らは正しく読もうとしていないだけで、ほんとうは含蓄のある文だ。実際私はこの文から貴重な印象を引き出せたので、この哲学者を大事に注目したいと思っていた。まだこの本は一部しか読んでいない。引き出せる内容が多い文の書き手、信頼している。

動きすぎてはいけない
動きすぎてはいけない
序-切断論

2013年に出版された単行本の文庫版。それまでの私は思えば接続過剰にずっと苦しんでいた。意識の中は情報に溢れ、絶望を深めていた。しかし、この哲学者の問題提起のおかげで、随分と自由になれた。今では帰りの通勤電車ではスマホを見ないし、休日は制作のために活動している。

この哲学者の著作である「別のしかたで」「勉強の哲学」も読んだ。哲学=概念工学の達人と思う。この哲学者と同時代を生きていることを幸福に思う。

暇と退屈の倫理学
暇と退屈の倫理学
第一章 暇と退屈の原理論

学問は暇な人間の遊びだ。現代が機械化されるほど、労働の必要が減り、余暇を持てる。暇を持つと余計なことを始めてろくなことにならないが、哲学ならまだましである。多少不幸になるだろう。それでも時間をかけてお金をかけずに楽しめる趣味になるだろう。その意味で、暇と退屈を扱うこの本は哲学の入門に最適だ。

人はなぜ退屈するのか。深い問いである。矛先が自分に向けられ、答えられないので、どんどん読み進めてしまう。うさぎ狩りの話、ハイデガーの三形式の話、いずれも昔からよく考えられた問いで、今でも問いとして機能するところに、普遍を見出せる。昔から人間の知的生活は大して変わらないと思うことが、生涯の安心を与えてくれる。次の章も読み進めたい。

Webデザイン 良質見本帳
Webデザイン良質見本帳
PART3 業種・ジャンル別から考えるデザイン

Webを見ていると、あまりにたくさん見かけるので、印象で内容を見分ける癖がついた。配色や配置によって、どのようなサイトか判断するのだ。Webサイトなぞ森のように存在し、探し当てたいページなどほんの僅かだ。なので、Webデザインの役割は、検索動機をすぐに満たすことを実現させることが第一だ。芸術的要素はそれに追随すれば良い。

この本の著者は、Webデザインを印象と機能からなると定義し、様々な印象の分類をすることで、機能が高まることを示している。Webサイトの印象を表現するための考え方を、この本は提供している。

広報入門
広報入門
序章 広報の使命と求められる資質

広報の仕事が始まるので、広報関連の本を3冊買った。いずれもまだよく読めていない。初めての話しが多く理解が難しい。その点、この本は分かりやすく書く努力と工夫が垣間見え、通勤で読むようにしている。

私の職は研究所のデザイナーで、ウェブ担当という役職名を拝命した。しかし確かに、コンテンツも考えて作る必然がある立場だ。広報とPRは異なる概念であるとか、広報の定義を押さえるところはこの本で分かったが、まだまだ読みが足りていない。

モードの迷宮
モードの迷宮
序 ディスプロポーション

エロとは何か。昔同僚の技術者が、情報通信業界はエロを求めてエンジニアになった人がほとんどだといっていた。計算機に触れたきっかけが、エロだというのだ。世界的にもインターネットのトラフィックは、半分がエロらしい。エロは男女問わず生理的に必要だから仕方ない。

では、ほんとうのエロとは何か。居酒屋でも語れないこのテーマを、本著は縦横無尽に語りつくす。真裸より一枚の衣服で一部を隠しているほうがエロだとタモリはいった。それがなぜかを本著は問うている。ほんとうに虜になるエロが分かると、ウェブビジネスの参考にできるかもしれない。あ、いや、自分はビジネスにしないです。

日本の美しい色と言葉
日本の美しい色と言葉
第1章 日本文化と伝統の技

「配色アイデア手帖」がすばらしい本で、自宅用に加え職場用にもう1冊買おうとしたら、第2作が出ていた。それがこの本だ。サイズの配慮がすばらしい。キーボードの手前に置けるので、開発しながら使える。この点は、一般のプログラミングの本も参考にしてほしい。そして、色に付けられた名前がうつくしい。写真から色を拾って命名したと思われる。16進数も付いており便利だ。